「鮒鶴」が京都中にその名を轟かせたのは昭和2年のこと。当代きっての宮大工が手がけた大料亭は、鴨川に並走して大きな窓をしつらえた3階建てで、町家が連なる中でひときわ異彩を放っていました。さらに昭和7年には南側に寄棟造の5階建てが増設され、南北一体となって大胆な折衷美をみせる五層楼閣建築が完成したのです。
南側増設の際に設計を任されたのは、東京帝国大学出身の建築家・柴田四郎。鉄骨の採用やエレベーター新設といった斬新な意匠が提案され、窓や照明にはフランク・ロイド・ライト風のアールデコ装飾が施されました。新旧の見事な融合は、伝統を重んじつつモダンを受け入れる京都人の琴線にふれ、その羨望を一身に集めました。
平成20年、新たな歴史の幕を開けたFUNATSURU。コンセプトは“新旧が融合したジャパニーズモダン”です。京都を代表する純和風建築はそのままに、1階にはモダンなラウンジやフレンチレストラン。2階より上は、今では再現不可能とされる折上格天井とモダンな内装が調和した空間に。日本一古い昭和初期のエレベーターも現役です。
京都には古くから、夏限定のレストランを川の上に設置して、避暑と食事を楽しむ文化があります。「川床」という夏の風物詩で、毎年多くの観光客が訪れます。FUNATSURUの川床は5/1~9/30の毎日開催し、期間中は特別フレンチをお楽しみいただけます。